BTTFをアインシュタインの特殊相対性理論で考察する。人類にタイムマシンは作れるのか?

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「バック・トゥ・ザ・フューチャー/Back to the Future」通称”BTTF”に登場するデロリアンは過去にも未来にも行ける車––––いわゆる「タイムマシン」である。爆発的に世界的に大ヒットしたBTTFの一作目では1955年の過去にタイムスリップし、2作目では2015年の未来に、最終作の3作目では1885年のさらに過去へとタイムスリップした。一昨年の2015年はマーティ達がタイムマシンを使ってやってきた年ということで、それはそれはマニアの間では話題になった年であった。

しかしもうすぐ2018年になろうとしているが未だにタイムマシンは実現していない。映画の世界では悠々に過去にも未来にも行くことが出来るが、実際には1秒先の未来にも行けないのが現状である。それでも面白いのはタイムマシンは未だに実現していないのにも関わらず、我々は「タイムマシン」の明確なイメージを共有していることである。

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現実にタイムマシンが無いのにも関わらず、我々がタイムマシンの概念をスンナリと受け入れていられるのは漫画や映画などの影響が大きいだろう。人類の時を超えたいという強烈な願望が、想像力をガソリンにして出来上がったのがタイムマシンである

 

 

 

子どもの頃はサンタクロースを信じていたのと同じで、大人になってからは「タイムマシン」なんていう乗り物は夢物語で映画の世界だけの話であることは良く分かっている。過去に戻って好きだったあの子に告白したいと誰もが思っているだろうが、大人になった我々は過去には戻れないということは嫌という程分かっている。

しかし子どもの頃からの夢を未だに追っている大人達がいる。タイムマシンを本気で作ろうと思っている知的好奇心の塊の様な大人達のことを物理学者と呼ぶ。
現代物理学はもはやSF映画である
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アメリカ合衆国の理論物理学者キップ・ソーンは物理界では超大物で、毎回恒例の芸能人で例えると北島三郎みたいな立ち位置にいる人である。分厚い電話帳のような「重力理論」という本の著者のひとりとして有名で、重力理論や宇宙論の権威として物理学界に君臨している。実は今年のニュースを良く追っていた人ならばキップ・ソーンの名は聞いたことがあるかもしれない。そう、今年のノーベル物理学賞受賞者のひとりである。物理とは無縁の一般人の多くは「ほ〜ん重力波かぁ、なんかかっけぇ」と思ったはずだ。

 

そんなお偉い物理学者キップ・ソーンは映画における科学構成のアドバイスにも精力的で、あの「インターステラー」の監修を務めたことでも有名だ。「インターステラー」についての細かな科学構成が知りたい方はキップソーン著The Science of Interstellarを読まれることを薦める。
なぜここでキップ・ソーンの紹介をしたかというと彼は「タイムマシン」理論を大真面目に研究している物理学者のひとりで、実際に過去へ行く方法を論文として発表しているからだ。さて、それでは現代物理学で考えられているタイムマシンの理論を見ていこう!
未来に行く方法
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タイムマシンとは時間を自由に行き来する乗り物であるから、まずは「未来に行く」方法と「過去に行く」方法をふたつに分けて考えよう。実は未来に行く方法はそんなに難しくない。その理論を簡単に説明しよう。

 

アインシュタインの相対性理論によると「物体が光速に近づくとその質量は増加し、時間の流れが遅くなる」ことが分かっている。とはいえ質量や時間の流れの変化は我々の生活レベルでは意識出来ない。それは光速に比べて我々の速度が単に遅いだけだからであり、実際に地球を周回する衛星は地上との時間の遅れを考慮しないとGPSがズレてしまうので相対論的な補正が必ず必要になってくる。もっと身近な例でいうと新幹線に乗って東京から博多までの1200キロを移動すると、約10 億分の1秒だけ未来に行くことが可能だ。またロケットに原子時計を積んで地球を高速で地球を一周させればその原子時計は地上にあった時計と僅かにズレる。
この時間の相対性の性質を利用してタイムマシンを作ることは難しいことじゃない。なぜならとにかく光の速度に近づけばいいからだ。つまり光速に近付くことの出来る乗り物に乗れればその中での時間の流れが遅くなるので、元の位置に帰ってきたときには未来に行っていることになる。具体的に説明しよう。
双子の兄が光速の約80%で20光年先までの目的地に行って帰ってきたとする。このとき地上に弟が待っていたとしたら、兄が持っている時計では30年経っていたが、地上の弟が持っている時計では50年経っていた!これが「双子のパラドックス」と呼ばれる現象である。またの名を「ウラシマ効果」と呼ぶ。そう、あの浦島太郎から取った名だ。(参考 竹内薫「超光速ニュートリノとタイムマシン」)
とはいえ光速に近づけるのだって充分に難しい。BTTFではデロリアンが時速140kmに加速すれば未来に行くことが出来たが、それでは遥かに速度が足りないのが良くわかる。しかしたとえ亜光速で走行出来る乗り物が完成したとしてもその加速に人間が耐えられる筈もない。かなりの障壁が考えられるがそれでも過去に行くよりは簡単である。
過去に行く方法
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さて問題の過去に行く方法について考えてみよう。先ほどのように光速にいくら近づけたところで過去にはいけない。なので全く別の方法を考える必要がある。ここでキップ・ソーンのワームホールを利用したタイムマシン理論の力を借りよう。

 

ワームホールとはトンネルのような通り道を持つ穴のことで、空間のある一点と他の一点を繋ぐ性質を持つ。ワームホールに関する理論に登場してくる数式は非常に難解なのだが、SF映画に良くワームホールが登場してくるので案外聞き覚えのある名前である。
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イメージでいえばドラえもんのどこでもドアのようなもので、空間のある一地点と他の一点を繋ぐ役割を果たす。まずこのワームホールを用意して少々の細工を加える必要がある。議論を明確にするためにワームホールの入り口をA、出口をBとしよう。

 

ワームホールをタイムマシンとして活用するために出口Bを光速で移動させ、再び元の位置に戻す。そうすれば先のウラシマ効果によりAとBでは時間の差が生じる。つまりAから見ればBは過去である。このような仕組みを作っておけばAからワームホールを通ってBに出れば晴れて過去に行けたことになる。
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ドラマ「JIN 仁」での過去への移動方法はワームホール形式だ。デロリアンによる移動方法とはかなり違うことが分かる筈だ。

 

しかし、この方法の何が難しいのだろうか?主に難しいポイントは2つある。ひとつはワームホールがあるかどうかすら良く分かっていないことだ。理論上あってもおかしくないというだけで未だに発見されていない。ワームホールがなければこの理論は破綻してしまうわけだから、この辺は完全に神頼みしかない。
次にワームホールは基本的に(そして数学的に)不安定なものだということが問題になってくる。ワームホールを通ろうとしても次の瞬間にはワームホールが消えてしまうのだ。シャボン玉に指を触れるようなものでワームホールは一瞬のうちに破裂してしまう。ワームホールを安定化するためには負のエネルギーが必要になるのだが、この負のエネルギーというやつもこれまた理論上のものでその存在は確認されていない。要するに過去に行く方法で考慮されているワームホール、負のエネルギーといったものはそもそも現実に存在するかどうかすら分からないものなのだ。人間が絶滅する前にこの前提条件をクリアすることが出来るかどうかは誰にも分からない。
タイムマシンとは乗り物ではなく”仕組み”である
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ここまでで考えてみて良く分かったことは現代物理学において「タイムマシン」という言葉は”乗り物”を意味する訳ではなく、時を超えることの出来る”仕組み”のことを意味するということだ。過去に行くためにはワームホールを用意し、安定化させる必要があった。未来に行く方法にしても重要なのは乗り物本体ではなく、光速に近づくと時間が遅くなるということだ。

 

デロリアンという単一な乗り物が過去にも未来にも行けるための理論は現在存在しないのだ。きっと物理学者達はドグが開発した次元転移装置は喉から手が出るほど欲しいだろう。次元転移装置をドグが用意してくれれば、1.21ジゴワットの電力はなんとかなりそうである。しかしドグは1955年の時点でタイムマシンを可能にした次元転移装置の着想を得ていたわけだから途轍もない天才である。アインシュタインとホーキング足してキップソーンを掛けても全然追いつかない。
それにワームホールで過去に行く場合、タイムマシンが開発されていない過去へは行けないという理論的限界が明らかになってくる。これはその機構上、タイムマシンの出口を始めて作った地点が最初の出口となってしまうからである。それ以上過去に帰ることは出来ないのだ。ふむ、なかなか現実は厳しい。
映画と物理学
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「バック・トゥ・ザ・フューチャー/Back to the Future」 に登場するデロリアンのようなタイムマシンを作ることは極めて難しいことが良く分かった。しかし現実にここまで科学が発展した現代であってもタイムマシンを作れていないわけだからそんなことは当然である。それでもSF映画は科学的に間違っていても作品を出し続ける必要はあるのだろうか?

 

そんなことはどうでもいい!科学的に間違っていようが、合っていようがそんなことはScience Fictionには関係が無い。なんてったってフィクションなのだから!
それでも僕が映画を物理学という切り口で見ていくのは映画が実に知的好奇心を刺激してくれるものだからだ。タイムマシンが映画に出てきたら、じゃあ実際にタイムマシンは作れるんだろうか?と考えたくなるし、お菓子で爆弾を作るような映画があれば、本当にお菓子で爆弾は作れるんだろうか?考えてみよう!となってしまうのは当然である。そう考えたくなるほど映画が伝えてくれる世界は魅力的なのだ。
それに映画が描く世界が必ずしも間違いとは限らない。現代の科学で否定されているだけで、未来の科学では肯定されるかもしれない。SF作家ジュール・ヴェルヌの言葉をかりるなら人が想像することは、必ず人が実現できるからだ!
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If you put your mind to it, you can accomplish anything.
(何事もなせば成る。)

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