【理系考察】「デッドプール2」ヒーロー着地は本当に膝に悪いのか?なぜヒーローは三点着地を繰り返すのか?


「デッドプール2」でもネタにされてたように三点着地、いわゆる“ヒーロー着地”の元祖はGHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊の草薙素子というキャラクターに遡るらしく、それ以降「マトリックス」をキッカケにしてハリウッドでの導入が始まったらしい。そんなことは調べるまで全く知らなかったけれど、海外ではヒーロー着地はThree point landingと呼ばれ大変な人気で、ヒーロー着地のシーンのみを集めた下のような動画があることから察するに攻殻機動隊以降相当な数のヒーロー着地がハリウッドで多用されたようだ。

確かに単に不恰好に着地するよりも遥かにカッコいい。自身の頑強さを活かした屈強な着地‥”強さ”を表現するには持ってこいの表現である。手、膝、足の裏の三点で着地することからその名の通り三点着地と呼ぶわけだけど、「マトリックス」のトリニティに至ってはもはや手、足の裏、くるぶしである。流石トリニティ、くるぶしで着地する人は後にも先にも中々いないだろう。

「デッドプール2」でも一昨目と同じように「膝に悪い」とネタにされてきた三点着地だが、本当に膝に悪いんだろうか?考えてみれば三点で着地しているから衝撃を分散しているようにも見えるし案外悪い着地じゃないんだろうか。

実はこの問題を考えることでヒーローが三点着地を繰り返す本当の理由が明らかになってくる。考察しがいのある問題だ。

着地の衝撃はどのようにして吸収されるのか

1〜2mくらいの高さから飛び降りるとき、膝を曲げないで着地する人はいるだろうか?勿論、そんなことをしたら膝が壊れてしまうと我々は経験的に知っているので、衝撃を和らげるために反射的に膝を曲げるのが普通だ。しかしそもそもなぜ膝を曲げるだけで衝撃が吸収出来るんだろうか。飛ぶ高さが同じなら落下速度は同じはずだから不思議といえば不思議である。

三点着地の考察に入る前に着地の衝撃の吸収についての物理が少し必要なので、こちらから取り掛かろう。

さて、使うのはこの方程式だけである。まず「ドリーム」のときの復習としてこの方程式は物の加速度というのはかかってる力を物の質量で割ったものである、という意味を表しているのであった。要は力をかければかけるほど加速するし、重いものほど加速しにくいという当たり前のことを言っているに過ぎない。今回はこの加速度の部分に注目したい。加速度とは一定時間の間にどれだけ速度が変わったかを意味するものであるから

a=Δv/Δt

である。Δvは速度変化、Δtは時間変化を意味する。

自分が2mくらいの高所からジャンプして着地する状況をイメージしてみよう。このとき、落下による衝撃は足が地面と接触したときから始まり、その衝撃力は運動方程式でいう右側の部分である。ここで運動方程式をジッとよく見ると、人の質量は常に変わらないだろうから衝撃力を少なくするためにはΔv/Δtの値を小さくする必要があると分かる。さらに着地後は速度0になると分かっているのでΔv=着地直前速度−0=着地直前速度である。そう、つまり右辺の衝撃力を小さくしたければΔtを大きくする必要があるということである。

つまるところ着地の際衝撃を吸収する為に膝を曲げるという行為はΔt、つまり時間を稼いでるに過ぎない。着地直前の速度を0にしていく過程に時間をかければかけるほど衝撃力は軽いものになっていく。裏を返せば膝を曲げずに着地することはΔtを限りなく小さくすることであるから、衝撃力は全くもって分散されず、一瞬に力が集中することになる。さあヒーロー着地の恐ろしさ、見えてきたようだ。

なぜヒーローは三点着地を繰り返すのか

着地の際膝を曲げるという行為の物理的な意味は力を分散させる為だけの時間を稼ぐ、ということであった。

身近な例として‥
キャッチボールをしているときを想像してみよう。向かってくるボールをキャッチする際、普通ミットを自分側に引きながらキャッチするだろう。これも全く同じことで、ボールとミットの接触時間を増やすことによりその衝撃を和らげようとしているのである。つまり当たり前だけれど、ミットを全く動かさずにボールをキャッチしてしまうと‥腕がジーンと痺れてしまう。

この観点から言ってヒーローが行う三点着地は膝がそれ以上曲がらない状態で着地するため‥痛い。膝をクッションにして着地した場合とどれだけの衝撃差があるのかを計算するのはもうちょっと後にするとして、膝に悪い着地をヒーローはなぜ繰り返すのだろうか?

これには結構頭をひねったが、シンプルに答えを出すならカッコいいからだ、と言えると思う。別にヒーローがカッコよくなければならないと思っているわけではないし、そういうことを言いたいのではない。言いたいのは”力の誇示”という意味での”カッコよさ”である。

三点着地=力の誇示

ここまで考察してきたようにヒーローが頻繁にやる三点着地は膝を痛める着地であると分かった。しかし一般の人が三点着地をやるのなら膝を痛めるかもしれないが、今問題にしているのはヒーローだ。三点着地をしただけで「‥膝痛い‥」となるヒーローは流石に気持ち悪いので、何か別の理由があるはずだ。

着地の衝撃からダメージを受けないと分かってるなら、意図的に衝撃力を大きくすることで着地先の地面を豪快に割ること、破壊することが可能になる‥ヒーローが三点着地を繰り返す理由がここだ。ヒーローが三点着地をするときのコンテクストは大体が悪い敵に人が襲われていたところを助けに来るときである。なるほど、これから戦う敵の前に現れるときスッと着地して現れるよりバンッと着地した方が強そうだ!それにその敵が三点着地が膝に多大なるダメージを与えるということも知っていれば、「なるほど、こいつは膝が強いんだな」とヴィランに思い知らせることが出来る。つまるところヒーロー着地とは無茶な着地をすることで、自分(ヒーロー)がこれだけ強いんだぞ、お前はそんな奴と今から戦うんだぞ、という敵への力の誇示という強烈なメッセージなのだ。

 

まとめ

「デッドプール2」はR15作品でありながら、その実内容はファミリー映画という極めてロックな作品である。端的に言って僕はこの作品が大好きだ。多くの映画を観てきて大人になってしまった映画好き達は、ストレートに家族愛だとか差別悪を説かれても心には響いてこない。(しかし逆にストレート過ぎると響いてしまうという場合もあるが‥)それは大人になる過程で道徳的な考えは嫌という程教えられてきたからである。もはや我々は”当たり前”となってしまった道徳心を通して感動することが出来なくなってしまった。

しかしデッドプールは違う。デッドプールは家族愛を説きながら汚い言葉を吐くわ、殺し屋すらやってる始末である。こんな矛盾を体現したような奴に何を言われても響かないって?なるほど、それはそれで良い感想かもしれない。


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