【第0回 概観編】『インターステラー』の相対性理論を学ぶ。特殊・一般相対性理論とは一体どんな理論なのか?光速度不変の原理、相対性原理‥‥etc

言わずもがな、『インターステラー』はアインシュタインの相対性理論と関係が深い。相対性理論のことは「時間が遅くなったり早くなったりする」ということくらいしか知らないという方にも、相対性理論の主張するところを理解し、ディープな視点から『インターステラー』を楽しめるようになろう、というのが今回の連載の目的である。

相対性理論はとても難しい。「天才」の代名詞であるアインシュタインが考案した理論だから当然のことだ。ただ、量子力学などの他の主要な理論と比べはるかに理解しやすいというのも事実で、非常に理路整然とした理論である相対性理論は一歩ずつ進んでいけば体系的な理解に至ることが出来るものでもある。もちろん100%と理解するのはどの理論も等しく難しい。

ただ、たった一回の記事で相対論の全てを解説するのは不可能なので何回かの連載で相対論を細かく見ていきたい。そして相対論のことがある程度分かった段階で、『インターステラー』に戻り、説明済みの専門用語を交えながら解説や考察をしていきたい。いつも専門的な言葉を使えなくて少し困っていたので、それならば時間を使ってはじめに解説してしまおうという腹だ。最初は『インターステラー』から話が飛んでしまうが、あくまで『インターステラー』を物理学的な観点で理解するために相対論を学んでいくという目的の連載であることは忘れないでほしい。次回の第1回~第3回くらいまでは「あれ、この記事ただの物理じゃね?」となること間違いなしだ。

さて、今回は第0回ということでこれから学んでいく相対論の概観をつかんでいこう。アインシュタインが作り上げた相対性理論は2つに分けられる。「特殊相対性理論」「一般相対性理論」だ。ときどき勘違いしている人を見かけるが、歴史的にはまず初めに「特殊相対性理論」ができ、その後に「一般相対性理論」が出来上がった。「特殊」=「凄い」という意味ではなく、「特殊」=「限定されたモノ」、「一般」=「特殊よりも適用範囲が広い」ということで、くだけて言うと特殊よりも一般の方が偉い。逆に覚えないように気をつけよう。

まずは特殊相対性理論から見ていこう。

特殊相対性理論──光の速度は変わらない

1905年にアインシュタインが発表した論文が、特殊相対論のスタートといえるだろう。特殊相対論が含む内容は、実はとても単純で以下の2つに分けられる。

①光速度不変の原理

1つ目は「光の速度は見方によって変わらないよ」という意味の光速度不変の原理と呼ばれる要請だ。「要請」とは科学理論を構成していく上で「これは当たり前と見なそう」とするもので、話を展開していくための最低限の約束みたいなものだ。「振り子が左に振れたので、右にも同じように振れるはずだ」とするのが要請である。「左に振れた→右に振れる」というのは当然のことで、ここに疑問を挟むのはやめよう、というのが要請で、ここを議論の出発点にするよということである。

この光速度不変の原理については次回の連載で詳しく解説するので、ここでは多くを触れない。時速100kmの車Aを時速90kmの車Bで追いかけたら、追いかけてる車Bの運転手にとっては車Aは時速10kmで進んでいるように見えるはずだ。このことが光が対象だと成り立たない。時速30万kmで進む光は、時速20万kmで追いかけようとも時速30万kmで進むように見える。辻褄が合わないと思われるかもしれないが、その辻褄が光の話にも適応するといつ錯覚していただろうか(愛染風)。私たちが持ち合わせている自然に対する常識というものは、本当にかくも脆い。【第1回】の連載ではそういった「常識」がとても小さい範囲のものでしか通用しないことを学ぶ。私たちは井の中の蛙なのだ。

②特殊相対性原理

特殊相対性原理は「全ての慣性系で物理法則は同じ」というもので、「慣性系」という言葉を扱った後に解説したい。この原理は一般相対論で一般相対性原理へと昇格するので、相対論を貫く非常に大切な原理である。

①と②の基本原理を要請として、特殊相対性理論は構築される。具体的な話は殆どしてないが、この2つの原理の解説に内容が殆ど費やされるといっていい。さて、次は一般相対論を概観しよう。

 

一般相対性理論──”重力”もその仲間に

一般相対性理論は特殊相対性理論では排除していた「重力」のことも考慮にいれて考える理論だ。一般相対論も必要とする基本原理は2つに分けられる。

①等価原理

「重力と、エレベーターなどで感じる慣性力は同じものだよ」というのが等価原理だ。等価原理は一般相対論と特殊相対論を繋ぐ橋渡しのような役割をもつ原理で、とても重要な原理だ。詳しい内容は多分【第3回】あたりで解説することになる。

②一般相対性原理

特殊相対性原理を拡張した一般相対性原理は「一般座標変換に対して物理法則は共変でなければならない」というもので、【第0回】ではちょっと到底解説出来る内容のものではない。なのでここも【第3回】か【第4回】あたりで扱っていくとしよう。

 

『インターステラー』に関わる相対性理論の部分

相対性理論を大まかにも理解出来るようになると、『インターステラー』の科学的な現象部分がずっとよく理解出来るようになる。ブラックホールに突入するシーン(これは既に別の記事で考察したが)やテサラクトに到達するシーン、時間の流れが異なる星に滞在するシーン、そして感動的なラストシーン‥‥についてより突っ込んだ視点を持つことが出来るようになるのだ。

そのために学んでいくモノは大きく分けて2つ、「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」。それぞれに連載何回か割いて、じっくりと考えを深めていきたい。こういう高度な理論を一から解説するときの僕のポリシーみたいなものがあるのだが、なるべく物理学を専攻する学生が学ぶような順番で話を展開していきたいと思っている。理解しやすさを追い求めるあまり整合性や理論の体系性を無視するのは、いっときのカタルシスは得られても、他のSF作品を同じような視点で再び楽しむことができるような応用力は得られない。それにどうせ相対性理論を学ぶのなら、きちんと根本から、それこそ映画と直接は関係ないようなコトも知っていった方が断然面白いんじゃないだろうか。アインシュタインという名前を聞いて「何をしたかよく知らないけど、偉い科学者」という認識はこの連載が終わったころには脱しているはずだ。

冒頭にはあくまで『インターステラー』のために相対論を扱っていくと明言したが、多少関係なくとも僕が面白いと思うところは濃く解説してみたりと、なかなか性癖の出る連載になると訂正しておこう。とにかく肩の力を抜いて、ゆるりと相対性理論への寄り道を楽しんでくれたら僕も幸いである。

なお、記事の内容に関する質問等はTwitterで受け付けてもいるので、何かあれば遠慮なく言って欲しい。でも春休みの数学の宿題とかは解かないゾ

それでは【第1回】の特殊相対性理論の解説を待っていて欲しい‥!

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