『ギフテッド/gifted』を数学的に考察する。ナビエ・ストークスの方程式とは一体何か?

{C0A6B7F4-5F75-4C98-A24C-FFC96F76563C}

ギフテッド

今回の記事は「ドリーム」で考察したオイラー法の話が少し登場してくるのでこちらの記事を先に読んだ方が理解がしやすいかも。


「キャプテン・アメリカ」「アベンジャーズ」シリーズのクリス・エバンスが幼い姪に愛情を注ぐ独身男を演じ、「(500)日のサマー」「アメイジング・スパイダーマン」のマーク・ウェブ監督がメガホンをとったファミリードラマ。生まれて間もなく母親を亡くした7歳のメアリーは、独身の叔父フランクとフロリダの小さな町でささやかながら幸せな毎日を送っていた。しかし、メアリーに天才的な特別な才能が明らかになることで、静かな日々が揺らぎ始める。メアリーの特別扱いを頑なに拒むフランクのもとに、フランクの母エブリンが現れ、孫のメアリーに英才教育を施すため2人を引き離そうと画策する。母の画策に抵抗を続けるフランクには、亡き姉から託されたある秘密があった。(映画.com)
元から色んな映画に出てはいたけど、この映画『gifted ギフテッド』の影響でマリー役のマケナ・グレースちゃんのインスタのフォロワー数は今見たところ46万人にまで達していて凄いことになっている。身長127cmのくせに生意気だろって今作を観る前には大人気なく思っていたけど観終わった後には「実際妥当。」という感想がもれなく漏れ出してきた次第だ。ちなみにこういうところでなぜか韻が踏めてしまうところが僕の才能だ。
{1076858C-3069-4C30-A0DB-8568598D74E4}

ガウス積分の証明をしてたね。僕の方が速く出来ますよ(煽り)

さて今作では僕のそんなどうでもいい才能ではなく天才的な数学の才能を持った子、マリーという女の子を中心に物語が動いていく。今回は金属を投げたりしない叔父のフランク(クリス・エヴァンズ)と”普通”の生活を送るはずだったのに、その天才的な数学の才能を持ったおかげで各方面から英才教育を受けろと強要される。周りの大人は「せっかくの才能が勿体無い!」と言わんばかりで、それでもフランクはマリーの特別扱いを拒み続ける。せっかくの才能を無駄にしないでその才能を伸ばすことがマリーにとっての幸せなのだろうか。それともフランクと暮らした方が幸せなのか。マリーにとっての本当の幸せとは何なのだろうか?‥というのが簡単に言えば今作のテーマだ。
ポスターの「1番大事なのは<愛する>才能」というやつはちょっと意外だった。僕は「1番難しい<幸せ>の方程式」とかで来るかな〜って思ってたのに。
{26EA655C-DDB0-4FFE-876E-707E367F876C}
ポスターには「1番大事なのは<愛する>才能」とあるがそんなに単純な話じゃない。厄介なのは登場してくる主要な大人達は皆、その方向は違えどマリーを愛していることだ。フランクはマリーを愛しているからこそ”普通”の生活を送って欲しいわけだし、フランクの母エブリンだって愛しているからこそ数学の才能を無下にはしないで欲しいのだ。どちらも本人のためになると思って行動しているから正解が見つかりにくいのだろう。
それにマリーは7歳の女の子だ。これが15歳の女の子の話なら本人の意思を尊重して事を進めればいい話だが、7歳じゃ難しい。
大人達からの愛とエゴが混ざった感情に7歳の女の子が振り回される姿を観ると、観ているこっちも”関係無い”じゃ済まされない‥なんて気持ちになる。
{1745C0B6-DAD7-4891-9E6A-3E661E1D1C08}

幸せの方程式というのがあるならばその解の※線形結合を取ったようなラストで奇をてらったようなものでは無いが、マーク・ウェブが言うようにいい意味で「シンプル」な映画だった。

※”線形結合”でググろう!!
ナビエ・ストークス方程式とは何か
{0AD2AECF-B16F-4CCB-9A4A-D1C65A80CA5A}

さて本題に入ろう。しかしなんか最近こういう数学や物理の解説ばっかりだけどこれでいいのかな。でもこの手の映画が最近多いから僕のせいじゃない(転嫁)。

写真はジョージ・ガブリエル・ストークスという19世紀の数学、物理学者だ。前回オイラー法について説明したときに物理数学界隈での数学者のオイラーは芸能界でいう新垣結衣くらいの知名度だと言ったが、ストークスは大体相武紗季くらいだ。
{C54AF512-EEEB-4EAC-9D13-ED5DFFEEA7C9}

ストークス=相武紗季

ストークスは数学、光学、流体力学で数々の業績を残した偉大な学者さんで大学の物理の専門書を開けば高確率で目にすることになる。彼ともう1人の物理学者アンリ・ナビエの名前を取った方程式がナビエ・ストークス方程式と呼ばれるものだ。
さて、その方程式とやらの内容を見ていこう。
{24533DFD-DADE-4D03-8F81-08AF39D17612}

顔文字みたいなのが見えるはず‥

この式がナビエ・ストークス方程式なのだが、この式を一から解説したら何ヶ月もかかってしまうのでそれは止めるとして、この方程式は具体的に何を意味しているのかを手始めに考えよう。
この方程式は流体に関する方程式だ。流体とは液体のことだけではなく、酸素や空気などの気体のことも指す。液体の運動を支配するのがこのナビエ・ストークスの方程式だ。
オイラー法の記事のときに力学の運動方程式というのを紹介した。
{454F51F9-E6F6-476C-AAA6-181A44A7A090}
この方程式はニュートン力学における最も重要な基本方程式でここから様々な法則を導くことが出来、質量と力さえ分かれば物体の加速度が分かるというのが運動方程式が意味するところだった。
{ADE4C93A-83FE-4130-A70B-7E060293C8E4}

変形しない密度が均一な鉄球の運動を考えるのは比較的に楽だが、水のような流動性の高いものの運動を数式で記述するのは難しい。コップ一杯の水の運動を知るのも運動方程式を使っていては日が暮れてしまう。水を構成する分子ひとつひとつは確かに先の運動方程式に支配されるが‥莫大な数の粒子が集まってしまっては考え方を変えるしかない。

コップ一杯の水の運動の記述‥‥それをやってのけたのがナビエ・ストークスの方程式なのだ。力学における基本が運動方程式であったように、流体力学における基本はナビエ・ストークス方程式なのだ。それでもパッと見て分かるように運動方程式よりも数式がかなり複雑だ。なんか文字がいっぱいあるしね。理論上はこの方程式を解くことが出来れば流体の運動を完全に記述出来るということになる。
しかしこの方程式は二階非線形偏微分方程式と呼ばれる微分方程式の部類のもので、人類史上未だにこの方程式を解いた人はいない。つまり世界一難しいクイズなのね(´∀`)線形のものに比べて非線形の微分方程式は格段に難しい。加えると解けるかどうかすらも分かっていない。
解けてないんじゃ意味無いじゃないかと思うかもしれないが、オイラー法の説明のときに解けない微分方程式も存在するという話をした。数値解析的な手法を取れば解くことが出来なくてもコンピュータを使うことで状況の把握は可能だ。しかしそれはあくまで近似的なものに過ぎないため、完全に解ける事に越したことはない。
 
{467EB044-E9AB-4F9E-B67D-51B9932C4A91}

いわゆる世界一難しいクイズはこの世に7つあり、解いたら100万ドルが賞金として与えられるためミレニアム問題と呼ばれている。ナビエ・ストークスを解くというシンプルな問題もミレニアム問題のひとつだが、既にポアンカレ予想と呼ばれる問題はペレルマンという数学者によって証明されている。でも彼は100万ドルの受け取りを拒否した。「証明が合ってさえいれば賞金はいらない」––––数学者は変わり者が多いのだ。

{721B838C-D699-4C5D-8B31-8C0D9677013B}

数学の論文というのは「出来た〜!」ってな感じの軽いノリで終わるものではない。論文が発表されると世界中の数学者がその論文を精査する。「ここの論理は間違ってるんじゃないか。」だとか「この定理は一体どういうことか?」など様々な議論を浴びせられることになる。発表者はそのような戦いの中で自分の論文を守らなければならない。マリーの実の母が遺した論文「ナビエ・ストークスの方程式の完全解」をフランクがエベリン(フランクの母)に守れ––と伝えたのはそういうことだ。

{A8284C13-666C-47C7-8540-B7ABD2D5D262}
今作はマリーが開花する才能が数学だったことに意味があると思う。数学の世界というと無味乾燥なイメージを持つ人が多いはず。感情論が通じない論理的で抽象的な世界‥‥これはマリーを取り囲む愛情の世界とは真逆なイメージだ。根底にこんな相対したイメージがあるからこそ観ている我々は「行かないでマリー!」や「いや数学の世界に行くんだ!」(多分少数)のように立場が綺麗に分かれたかもしれない。
しかしその答えは数学のように明確なものじゃなくてもいいのだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です